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【ABX 2026】見えない購買をなくす ― アカウント設計から全社データ活用まで、購買改革の実践

間接材購買の課題は、「どう使い始めるか」と「データをどう生かすか」という二つの段階で姿を変えます。2026年7月28日の「Amazon Business Exchange 2026」では、その両段階に対応する2つの分科会が行われました。「導入企業が語る購買改革のリアル ~Amazonビジネス活用の第一歩~」では明日から実践できる設定・設計例を、「可視化の先にある購買改革 ~先進企業に学ぶ、データ活用の次の一手~」ではデータを分析し社内に定着させるアプローチを、導入企業の事例とともに紹介しました。

【登壇者】

講演タイトル:導入企業が語る購買改革のリアル ~Amazonビジネス活用の第一歩~

アマゾンジャパン合同会社
Amazonビジネス事業本部 コマーシャルセクター営業本部 広域営業部

アカウントエグゼクティブ

浦東 敢太

 

講演タイトル:可視化の先にある購買改革 ~先進企業に学ぶ、データ活用の次の一手~

アマゾンジャパン合同会社

Amazonビジネス事業本部 コマーシャルセクター カスタマーサクセスマネージャー

宇佐美 俊

 

アマゾンジャパン合同会社

Amazonビジネス事業本部 パブリックセクター カスタマーサクセスマネージャー

村田 あす実

 

 

アカウントの設計から始まる、承認と発注を一本化する購買改革

 

最初に登壇したのは、Amazonビジネス事業本部 コマーシャルセクター営業本部 アカウントエグゼクティブの浦東 敢太です。テーマは、明日から自社で試せる設定と設計の具体策でした。

 

設定と設計の前提となるのが、アカウントの構造です。Amazonビジネスは複数のユーザーが一つのアカウントにログインでき、グループ設定によってアカウントの中に組織図をそのまま再現できます。これにより部署や拠点ごとの購買管理が可能になります。支払い面では請求書払いに対応しており、現金立替や小口現金で生じる本人の立て替え負担と、経理側の精算工数を削減できます。

 

ただし、導入の初期段階ではガバナンス上の問題が生じます。ドメインアドレスがあれば誰でもアカウントを作成できるため、社内で複数のアカウントが並立する状態に陥りやすく、その影響は購買管理の全体に及びます。

 

「誰が何を、どのような目的で購入しているのかを把握できなくなります。プライム会員のアカウントとそうでないアカウントが混在してコストの無駄が生じるほか、退職に伴い管理者が不在となったアカウントが残存する事態も起こります」(浦東)

 

アカウントを全社で統合した次の課題が、購買先の集約です。複数の購買先を併用していると、購買ポリシーをチャネルごとに整備する必要が生じ、現場ではサプライヤーの比較が、経理では請求書の散在による処理工数が発生します。

集約の判断材料となるのが「価格比較サービス」です。利用中のサプライヤーの購買データをもとに同一商品や類似商品をマッチングし、切り替えた場合の年間の価格差を試算します。社内で上申する際の定量的な根拠になります。

 

こうした設定を組み合わせているのが、『キシリクリスタル』『つぶグミ』『グリーン豆』などの製造・販売を行う菓子メーカーの春日井製菓株式会社です。

従業員500名以上の同社は、Amazonビジネスのアカウントに約120名を登録し、部署や拠点にあたる31のグループと、その下に109のサブグループを設けて組織構造を再現しています。また、支払い方法は請求書払いに統一し、承認ルールを設定しています。

Amazonビジネス導入前は、消耗品類の申請承認と請求書突合に大きな工数がかかっており、申請する現場、承認する上長、処理する経理担当者の三者すべてに負荷が生じていました。そこで、承認ルールと購入品リストを設定し、支払い方法を請求書払いに統一した結果、利用率は半年で9割に拡大。紙やメールでの申請はゼロになり、毎月2〜3時間かかっていた請求書の突合は5分に短縮されました。

「コスト削減というと商品単価に目がいきがちですが、人的工数を削減すればその時間を他の作業に充てられます。外注費や経費の削減にもつながり、より広義なコスト削減を実現できます」(浦東)

 

もうひとつの事例が、居酒屋チェーンの「世界の山ちゃん」を展開する株式会社エスワイフードです。同社は、Amazonビジネスのアカウントに98名を登録し、3つのグループと93のサブグループを設けています。

従来はコーポレートカードを利用して購入を行っていましたが、サプライヤー数と店舗数の増加に伴い、購入理由の確認や会計処理の煩雑化、インボイス制度への対応が購買フローを圧迫していました。そこで、Amazonビジネスへの集約とマネーフォワードとのAPI連携を同時に進めた結果、月25時間の業務削減を実現しました。

両社の例が示すように、設定の組み方は抱えている課題によって変わります。

 

1つ目は「集中購買の効率化」です。購買部や調達部は本来、購買を代行する組織ではなく、コストコントロールを高めながら現場の負担を減らす戦略的な組織であるべきです。承認ルールとグループ設定を全社に広げれば、発注者が商品選定まで直接行え、承認と購買を一つに統合できます。


2つ目は「案件単位の購買管理」です。方法は2通りあります。ひとつはグループの応用で、グループを部署名ではなく案件名で作れば、購買が案件単位で集計され、請求書も分割発行できます。もうひとつが注文情報機能で、注文画面に任意の項目を追加してプロジェクト番号などを紐付ける方法です。案件期間の長い業態にはグループ、入れ替わりの激しい業態には注文情報機能が向いています。


3つ目が「多店舗・多拠点の購買管理」です。グループの下にサブグループを重ねて階層を作れるため、事業部、エリア、店舗といった組織の階層をそのまま再現できます。なお、請求書は店舗単位及び事業部単位でも発行可能です。

 

既存のワークフローシステムを持つ企業では、Amazonビジネス側でも承認を取ると二重の承認になるため、承認の扱いがハードルになります。注文情報機能を使い、稟議のリクエストナンバーを入力させれば、既存システムで承認済みであることを紐付けたうえで、Amazonビジネス側の承認は簡素化できます。また楽楽精算などとのパンチアウト連携(※)を使えば、連携元の承認フローがそのまま適用され、ユーザーマスターも共有されるため、初期設定や異動に伴う工数も抑えられます。

 

「組織体制も、業務の背景や課題も、各社で異なります。設定に唯一の正解はありません。Amazonビジネスでは、それぞれの企業購買の最適化と、次のステージへの前進を支援していきます」(浦東)

※パンチアウト連携:自社の購買管理システムから外部のサプライヤーECサイトへシームレスにアクセスし、商品を選択して自社システムへカート情報を戻す仕組み

分析・浸透・効果測定のアプローチサイクルで蓄積したデータを施策に変える

 

次のセッションでは、民間企業を担当するカスタマーサクセスマネージャーの宇佐美 俊と、介護・医療・教育機関を担当する同じくカスタマーサクセスマネージャーの村田 あす実が登壇し、可視化したデータをどう分析し、社内で実行・定着させるかについて語りました。


購買システムの導入で実現したいこととして多く挙がるのは、コスト削減、購買の可視化、業務効率の向上、ガバナンス強化の4点です。しかし導入しただけでは、その手前に3つの壁があります。

 

1つ目はコスト高騰の継続。直接材と違い間接材の値上がりは気づきにくく、削減のつもりで導入したにもかかわらずコストが上がっている企業もあります。

 

2つ目は購買データの死蔵化。データを取得できても分析に充てる時間や人員を確保できず、蓄積したまま活用されません。

 

3つ目が調達先の乱立と分散。部門や拠点が縦割りで動き、隣の部署が何をどこで購入しているかが見えない状態が、購買改革の障壁になります。


これらは単にAIを導入しただけで解決するものではありません。マサチューセッツ工科大学(Massachusetts Institute of Technology、MIT)の調査(※)によれば、生成AIを導入した企業の95%が投資に見合うリターンを得られていません。導入は進んでも、変革には至っていないのが実情です。

※調査出典:MIT Media Lab NANDA イニシアチブ『The GenAI Divide: State of AI in Business』(2025年7月発表)。同調査は、52組織へのインタビュー、153名のシニアリーダーへのサーベイ、300件超の公開AIイニシアチブ分析を組み合わせたもの(調査期間:2025年1月〜6月)。対象地域・業種の分布が限定的である可能性があり、すべての企業に一律に当てはまるものではありません。

 

問題はAIという手段そのものではありません。目的を定めないまま導入し、現場に浸透させる工程を欠いたままでは、AIであれ購買システムであれ成果には結びつきません。裏を返せば、目的の解像度と現場への浸透が伴って初めて、手段は機能します。

壁を越える出発点になるのが、導入目的の解像度です。コストを下げたいならどのカテゴリーでどれだけ下げるのか、可視化したいならその先で何をしたいのか。そこまで掘り下げたうえで、施策の実行と効果の検証を繰り返す必要があります。

 

Amazonビジネスが購買改革の支援に用いているのは、「Analysis(分析)」「Awareness(社内浸透)」「Monitoring(効果測定)」を回すアプローチサイクルです。効果測定の結果を次の分析に戻し、対象カテゴリーや優先順位を入れ替えながら継続的に回していきます。ただし本業を抱える担当者だけで回すのは難しいため、担当営業とは別に、戦略設計を担うカスタマーサクセスマネージャーと、社内浸透を担うプロモーションマネージャーを配置しています。


Analysisの工程では、他のB2Bサプライヤーのデータも預かって分析します。列名やカテゴリーの粒度が各社で異なるデータを同じ粒度にそろえ、カテゴリー単位で構成比を比較。さらに類似商品まで含めて価格を比較し、数千点規模でコスト削減余地を可視化。どのサプライヤーで年間いくら買い、切り替えでどれだけ安くなるかをマッピングして返します。

 

Awarenessの工程では、部門ごとに購買量の多い「パワーバイヤー」を特定し、なぜ別のサプライヤーで買っているのかをヒアリングしたうえで、切り替えに値するかを意見交換します。管理部門、実購買部門、Amazonビジネスの三者が合意して最適化を進める流れです。ポスターの配布や工場でのサンプル展示会など、現場に足を運ぶ施策も少なくありません。

 

Monitoringの工程では定期的にレポーティングを行い、当初のKPIに沿って効果を検証します。

 

宇佐美が、この3つの工程のなかでもAwarenessを特に重視するのには理由があります。

「どれだけ分析をして戦略を立案しても、現場まで浸透しなければ購買改革は起こりません。そうした気づきから、プロモーションマネージャーというポジションができています」(宇佐美)

見えない支出を洗い出し、購買の全体像を一つのレポートに

 

続いて村田が、このアプローチサイクルを実際に回している2社を紹介しました。業種も規模も異なりますが、データの可視化を起点にしている点は共通しています。


1社目は、産業用ディーゼルエンジンを核に、農業機械、船舶、建設機械を手がけるヤンマーホールディングス株式会社です。

 

同社では、2013年から集中購買に取り組んできましたが、カバーしきれない領域が残り、立替精算が間接材購買全体の4分の1を占めていました。さらに、立替精算ゆえに、何をいくらで買っているのかが把握できず、支出にガバナンスを効かせられない状態が続いていました。

 

そこで幅広い従業員にアカウントを付与。カテゴリーごとに最適な調達先を明示しました。これにより、立替精算の比率は7%まで低下し、わずか1年で8割以上の部門がAmazonビジネスを利用するに至っています。

 

2社目は、北関東を中心にサービス付き高齢者向け住宅や有料老人ホームを展開する株式会社ヴァティーです。

 

同社では、施設ごとの個別購買による非効率性が課題になっていました。具体的には、各施設の職員が小口現金やコンビニ払いで支払いを済ませ、その都度精算していたため、本来利用者と向き合うべき時間が削られ、本社側でも会計処理が複雑化していました。

 

そこで同社はAmazonビジネスを導入し、購買改革に前向きな10施設から段階的に運用を開始。現場のフィードバックを得ながら、約2〜3カ月で全施設へ展開しました。その結果、小口現金による精算額は年間で約30%削減されています。

 

同社が目指すのは、効率化で生まれた時間を利用者に還元することです。集約された購買データは入居者が何を求めているかを示すため、これを先読みして必要なものを準備し、サービス品質の向上につなげる構想も示されました。

 

2社に共通するのは、ネット経由の購買を起点に改革を進めた点です。ただし購買の全体像は、そこだけでは捉えきれません。

 

「購買は、その都度買うもの、定期的に購入するもの、まとめて購入するものに分かれ、注文の経路もネットと、店舗や電話、商社経由とに分かれます。このうちネット注文は可視化が進んでいる企業も多い一方、店舗や商社を経由する購買は見えづらく、むしろそちらの方がボリュームは大きいという声も少なくありません」(村田)


この見えない領域まで含めて集約するのが、チャネル横断での分析レポートです。Amazonビジネスの購買レポートに加え、他サプライヤーのEC購買や立替精算、フォーマットを問わず預かったオフライン購買のデータまでを対象に、AIが商品名の意味を理解して分類。金額の大きい順に並べ、着手の優先順位を明確にします。

 

「それぞれの企業のデータが見えるようになった、その先に改革が始まると考えています。購買の全体像を捉えて改善し続ける。そのサイクルの起点を作るお手伝いが、私たちAmazonビジネスにできることです」と村田は強調し、セッションを終えました。

本資料に記載の内容は 2026 年 9 月現在のものであり、弊社において、これを予告なく変更等する場合があることを、あらかじめご了承ください。本資料に関連するサース内容、およびインターネットサイト上の表示等は変更となることがありますのでご了承ください。弊社は、本資料の記載内容につき細心の注意を払っておりますが、記載された情報の誤り等に関し、一切責任を負うものではありません。