Amazon Business Summit 2024.09 Amazon Business Summit 2024.09

Amazon Business Summit レポート

シン・戦略的間接材購買 ~ 注力領域と自動化の再定義

「一度使えば便利と分かる」トータルコスト削減に向けた社内浸透の進め方 – Amazon Business Summitイベントレポート

2024年9月10日(東京)と12日(大阪)、調達・購買リーダーを対象とする「Amazon Business Summit」を開催しました。支出削減とサプライヤー管理のみに注力すればよい時代が終わり、全社の業務効率化から様々な経営貢献を期待される今、注力領域と自動化を再定義して「シン・戦略的間接材購買」を議論しました。

経営管理レベルが間接材購買の実態から見える

東京と大阪で、200名を超える調達・購買リーダーが参加(オンライン含む)。PwCコンサルティング合同会社 シニアアドバイザー 野田 武氏による戦略的間接購買として目指すべき方向性をテーマとした講演に続き、ヒューマンホールディングス株式会社(以下、ヒューマンHD)から執行役員 IT戦略室長 兼 情報システム本部長 志村 弘樹氏および執行役員 経理部長 石木 孝之氏のお二方、リックス株式会社(以下、リックス)より総務部 総務グループ 山本 健太郎氏をお招きし、社内で浸透させようとしている”Amazonビジネスの今”について紹介いただきました。

基調講演において野田氏は、間接材購買はモノだけでなくサービスの外注費も含むため、真剣に取り組めばかなりのコストダウンを図れると指摘しました。実際に、多くの企業は1990年代から着手しており、いまや間接材購買の実態は経営管理レベルを測るリトマス試験紙のようになっています。一方、CSRやESGなどのテーマが間接材購買と関連してくるなど、新たな変革が求められている分野もあります。

そのため、間接材購買の全体で業務改革を考えている企業も多いのですが、野田氏は「モノを買う」ことと「サービスを利用する」ことは切り分けて考えなければならないと語ります。中でも、サービスの購入は継続的かつ固定的になりがちでブラックボックス化しやすいことが問題になります。硬直化してしまったサービスの中身にメスを入れ、汎用的なサプライヤーで代替できるものを分解、分離することで、競争的な価格水準を獲得可能です。こうすることで、値上げ圧力の高いサービスについても対抗することが可能となります。

PwCコンサルティング 野田 武 氏

PwCコンサルティング 野田 武 氏

Amazonビジネスへの統一からプロセス全体の効率化という価値を得る

ボトムアップ型で成功したヒューマンHDの介護部門

Amazonビジネスは、「ものを買う」部分を最適化できる仕組みです。今回事例を紹介してくれた2社のうち、ヒューマンHDの介護部門は、Amazonビジネスを利用することでコスト削減以上の価値を得られたと実感しています。

ヒューマンHDの介護事業全体で、業務に必要な買い物にかける時間は年間6,000時間かかっており、後工程となる経費精算には同3,000時間を要していました。大きな事業所では「業務の3分の1が事務処理」という社員の存在も確認することができ、この問題は経営課題としてクローズアップされてきました。

この状況を解決するため、現場からAmazonビジネスを使いたいという声が上がり、試験導入の後に事業全体に展開。最初は、構えていた現場スタッフでしたが、使ってみると、個人で利用しているAmazonと操作がほぼ変わらないことを理解しました。いままでのような経理処理が不要となり、その結果、現場スタッフの浸透は早く事務処理の時間を大幅に削減できました。コスト削減効果も顕在化しました。従業員立替によるひと月あたりの購買額は、700~800万から200~300万円と半減以下になりました。コスト面のみにとどまらず、削減できた時間を利用者様に接する時間に充てられるようにもなりました。顧客満足度はもちろん、介護スタッフの離職率の改善の一助にもつながり、コスト以上の効果を実感しています。

 

参考事例> ヒューマンライフケア株式会社 – 購買プロセスの見直しが9,000時間の工数削減に

ヒューマンホールディングス 志村 弘樹 氏

ヒューマンホールディングス 志村 弘樹 氏

コピー用紙21%、ペーパータオル35%の価格メリットを訴求

ヒューマンHDでは、介護部門での成果を受け、全グループへの展開を図ります。2023年7月、まずは教育部門に浸透させるプロジェクトがスタートしました。当時の間接材購買の状況は、年間購買額約1億4000万円 、同立替精算3万5000件という規模。すでに介護部門でノウハウはありましたが、教育部門は事業規模が大きく購入品目も大きく異なります。そこで、プロジェクト開始にあたり、現状の精査からスタートしました。

まずは、立替内容=購買データの分析です。その上で、Amazonビジネスに置き換えるものの精査と勘定科目の設定を実施しました。たとえば、レターパックや美術用の特殊な商品など、Amazonで買えないものとAmazonで買うべきものの切り分けです。

こうして土台を整えた上でスタートさせて1年が過ぎました。現在の状況について石木氏は、「成果の出ている事業所と出ていない事業所の差が顕著ですね」と明かします。「中にはAmazonビジネス化率0%の事業所もありましたが、初期に比べるとかなり浸透はしています。利用状況が可視化できるため、対策を進めやすくなるのはメリットです」。

志村氏は、「介護部門ではボトムアップで成功しました。Amazonビジネスは本来トップダウンで導入するという方法も取れますが、現場に強制したくなかったのです。現場が自発的に使っていくことで、自然に浸透しますから」と話します。

現在は、浸透率の低い事業所が他所で購入した品目を分析し、Amazonビジネスを使っていればどれくらいコストを下げられていたかをアナウンスする施策を展開中です。その際に、実際に商品分析した結果、「実際に現場が買ったもの」と「当時のAmazonビジネスの価格」を比較すると、たとえばコピー用紙は21%、ペーパータオルは35%の差が出ています。中にはAmazonビジネスの方が高い商品もありますが、全体として10%以上コスト削減できることが明らかになっています。また、現場が多少の価格の誤差を意識せず、Amazonビジネスに統一してくれることで、プロセス全体の効率化という価値を得ることができます。何より、まずは使ってもらうこと。現場には価格を訴求し、割引クーポンがあれば案内するなど、さまざまな啓発活動に取り組んでいます。

ヒューマンホールディングス 石木 孝之 氏

ヒューマンホールディングス 石木 孝之 氏

全社員が読む超優良メディア「社内報」への掲載で浸透を図る

リックスも、全社展開にあたって努力を重ねている最中です。リックスは、福岡市に本社を置く、メーカー機能と機械系商社機能を併せ持つ企業です。B2B商社、メーカー、研究開発などさまざまな部門があり、それぞれが必要とする間接材は、事務用品などは共通するものの、全く異なります。

以前はカタログ購買を利用していましたが、品ぞろえが限られていたため社員が現金購入して立替経費精算することがほとんど。個人としてAmazonを利用している人も多かったといいます。精算業務を実施するのは、各事業所の経理部門です。

山本氏は、「領収書精算の際に、同じ勘定科目であれば品目をすべて書かずに“◯◯など”でマージしてしまうケースが多く見られました。そのため、本部では何を買ったのかわかりません。とはいえ担当者の気持ちもわかりますし、強くは言えません……」と話します。「さらに手間なのが備品管理です。Excelで帳簿を作り、ラベルプリンターで印字。それを備品に貼るまですべて手作業なのです」。

2020年、Amazonビジネスを検討するにあたって、立替経費精算のAmazon利用状況を精査したところ、105人が該当しました。注文回数は400回以上、総額も200万円以上です。法人契約のメリットは、法人価格の適用、内部統制の強化などに加え、購入履歴を管理できることを重視しました。これにより、品目ベースでの管理が可能になり、備品管理業務の効率化も期待できます。

「しかし、導入したと言うだけでは利用されません。内部統制の強化につながることは明らかで、総務グループとしてはぜひ使ってもらいたいのです。そこで、現場にさまざまな手段でアピールを続けています」(山本氏)

いま地道に続けている施策が、他の購入手段との価格比較表を作って切り替えを推奨することで、一定の効果が出ています。そして、Amazonビジネスを次回の社内報に掲載することも決まりました。山本氏は、「社内ポータルだと見逃されてしまうことが多いのですが、弊社の社内報は全社員が読む超優良メディアなのです。これで一気に浸透させたいと考えています」と話してくれました。

リックス 山本 健太郎 氏

リックス 山本 健太郎 氏

一度使ってもらえれば、必ず便利さをわかってくれる

その後、すべての講演者を壇上に招き、パネルディスカッションが行われました。その場からも、Amazonビジネスの浸透について興味深いお話が聞こえてきました。

Amazonビジネスは初期コストがかからないため、“使えないシステムに無駄な投資をした”と反感を買うこともなく、導入そのものには議論が起こりにくいという側面を持ちます。一方、浸透させるのに努力が必要な理由として、使わなくても業務が変わらないことが挙げられました。絶対に使わなければならないわけではなく、現場からの反発もありません。使わない人の意見を集められないため、浸透させる方針策定の方向性が見えにくいのです。

実際に、購入品はさまざまで、すべてをAmazonビジネスに移行することはできません。つまり、現場はいままでのやり方をそのまま続けることができます。それを、変えてもらう必要があります。ただ、推進者は、自分たちだけでなく利用者にとってもメリットのあるソリューションであると前向きにとらえ、啓蒙活動に取り組んでいます。

 

山本氏は、「推進者としてはやってほしいですよ。現場も私たちも楽になりますし、経営管理レベルも上がります。とはいえ、これまでと同じことに価値を置いてしまうことも理解はできます。人間は、ルーチンを変えるのにパワーが必要ですから」と話します。「会社にとってメリットでも、自分にメリットはない、と判断される状態を変えなければなりません。とはいえ、信賞必罰で利用したかどうかを人事評価に加えるべきかというと、そこまではできないでしょう」。

石木氏は、「とにかく一度使ってくれれば便利さがわかるはず。そこに行くハードルは人によって違います。すぐに実感してくれる人もいれば、なかなか使ってくれない人もいます。強制しないと決めた以上、地道な啓蒙作業は必要になりますね」と話します。

そして志村氏は、こんなエピソードを明かしてくれました。「実は、ずっと自分ではAmazonを使っていなかったのですよ。それが変わったきっかけは日食でした。子どもと一緒に見たくて、日食用のメガネを探したけれどどこにも売っていません。そのときに、Amazonにあるよと教えてもらって、初めてAmazonで買いました。以来、すごい頻度で使っています(笑)。Amazonビジネスもそれと同じですよね。一度使って便利さを実感してもらえるよう、努力していきましょう」。

パネルディスカッション

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