厚生労働省
保険局 医療介護連携政策課長
山田章平 氏
本田技研工業株式会社
サプライチェーン購買本部 SCM・間接材統括部 間接材購買部 部長
福永大輔 氏
Amazon.com, Inc.
Global VP of Amazon Business
Shelley Salomon(シェリー・サロモン)
Amazon.com, Inc.
VP of Technology, Amazon Business
Doug Gray(ダグ・グレイ)
アマゾンジャパン合同会社
Amazonビジネス事業本部 事業本部長
石橋憲人
Amazon Business Exchange (ABX)は、経営層や調達・購買部門の責任者を対象としたビジネスカンファレンスです。2019 年から年次開催が続いており、購買改革の先進事例や最新の調達トレンドを学びながら、組織の垣根を超えて交流できる場として定着してきました。7 回目なる今回のテーマは「購買改革で解き放つイノベーション」。基調講演に加えて 15 の分科会が用意され、調達・購買分野の第一線で活躍するリーダーや業界の専門家、そして実際に購買改革へ取り組んできた 30 社を超える企業が登壇しました。
当日は、オープニングスペシャルステージとしてお笑い芸人のテツandトモが登場し、会場全体を和ませていました。そして基調講演では、Amazonビジネスのリーダー 3 名と 2 組のゲストが、AI もたらす調達の変化と、それぞれの現場での実践を語りました。また別会場では各企業のソリューション紹介ブースが並び、実際に商品を手に取れる展示や担当者との対話を求めて、終日多くの来場者でにぎわいました。セッション終了後の懇親会でも、業界や企業の枠を超えた横のつながりが生まれています。
基調講演の最初に登壇したのは、Amazon Business Global VP の Shelley Salomon(シェリー・サロモン)です。同氏は、多くの企業が購買改革の必要性を理解しながら実装に苦しんでいる現状を指摘したうえで、生成 AI の役割を挙げました。購買データの分析、削減余地の可視化、購買の自動分類——こうした作業をAI が担うことで、調達チームは戦略的なサプライヤー関係の構築やカテゴリー管理、複雑な交渉に集中できるようになります。
その具体例として紹介されたのが、「購買分析ダッシュボード」と「購買パターンモニタリング」の機能です。後者は、承認基準を回避するための分割購入や、通常と異なるカテゴリーからの購入といった異常な購買行動を自動で検出します。「システムが異常を警告してくれることで、承認基準を引き上げてチームがより迅速に業務を遂行できるようになります」と説明しました。
次に Amazonビジネスの導入事例も紹介されました。パナソニックでは、従業員が集中管理システムの外で個別に購入していた事務用品を、Amazonビジネスとの提携によって、既存の調達ソフトウェアに統合された単一のシステムへ集約しました。現在は 90 %以上の購買がワークフローを通じて行われ、6 か月以内に 10 万人の従業員が利用し、約 1 万時間の労働時間を削減しました。
また、全国 770 の介護施設を運営するツクイは、わずか 2 か月で Amazonビジネスの導入を完了し、1 年以内に施設レベルの導入率 98%を達成しています。
業種も規模も異なる 2 社ですが、得られた結果は共通しています。調達が背後でシームレスに機能することで、両社は自らが最も得意とすること、つまり顧客への提供に集中できるようになりました。同氏はこのような状態を、あるお客様の最高調達責任者の発言を引用し、「調達は目に見えないときに最も成功する。重要でないから目に見えないのではなく、すべてが本来あるべきように機能しているから目に見えないのです」と表現しました。
ステップが少なく、遅延が少なく、自動化されたインテリジェンスが監視を処理する――。それによって調達チームは最も重要なことに集中できるようになります。「必要なテクノロジーはもう揃っています。それを皆様の組織で実際に機能させるところまで、私たちがご一緒します」と同氏は述べ、講演を締めくくりました。
続いて登壇したのは、Amazonビジネス VP of Technology の Doug Gray(ダグ・グレイ)です。
はじめに提示したのは「調達ライフサイクル」という枠組みです。要件定義からソーシング、契約、発注、受領、支払い、分析・レポートまでを網羅し、Amazonビジネスがテクノロジー投資を判断する際の指針となっています。数年前まで、各段階を支えるテクノロジーは、手作業をデジタルに置き換えるものが中心でありながら、今起きていることと比較すると根本的に異なると説明しました。
同氏は「既存のプロセスをそのままデジタルに移し替えているのではありません。プロセスそのものを作り直しているのです。それを可能にしているのが AI です」と述べました。
いま最も多くの投資を集め、最も大きな成果をもたらしているのが AI エージェント。AI エージェントは、チャットボットやレコメンデーションエンジンとは異なり、目標を設定し、計画を立て、一連のタスクを実行するところまでを担います。ツールを使い、システムに問い合わせ、連絡を送り、想定外の事態が起きれば自ら対応を変えることも可能です。さらに、人間による安全策をどこに組み込むべきかも判断し、複数のエージェントが連携すれば、複雑な多段階の業務まで処理できます。
「これまでの AI は、やるべきことを『提案する』のみに留まっていました。ですが、AI エージェントは、そこから先の『実行』までを担います」と 述べました。
こうした変化を踏まえ、Amazonビジネスの新機能も紹介。AI アシスタント「Amazon Quick」の プライムビジネス会員特典への追加、24 か月の履歴データを備えた「購買分析ダッシュボード」と「購買パターンモニタリング」の週次ダイジェストメールとアクセス権の拡大。さらに、会話型 AI がアカウント設定や調達ワークフロー全体を支援する「Amazonビジネスアシスタント」を、年内に日本のデスクトップ利用者へ展開することも明かされました。
調達担当者の役割について、同氏は明確な見解を示します。「AI とエージェントプロセスは、調達の専門家を置き換えるものではありません。専門家が何をするかを再定義するのです。発注書の追跡や支出の手動分類、定型的な RFP の作成といった作業を AI エージェントが担えば、本来の目的である戦略的なサプライヤー関係の構築やカテゴリー戦略の策定、複雑な交渉やリスク管理などの取り組みにリソースを費やせるようになります」
基調講演では Amazonビジネスユーザーによるゲスト講演も開催されました。最初のゲストは、本田技研工業株式会社 サプライチェーン購買本部 SCM・間接材統括部 間接材購買部 部長の福永大輔氏です。
福永氏が着任した当時、年間 1 兆円規模の間接材購買を担う組織は、全国 11 か所に散らばっていた購買部門を一つに統合した直後でした。新システムの導入時期とも重なり、現場は疲弊していたといいます。「地域ごと、扱う商材ごとに、メンバーの気持ちも仕事の進め方もバラバラでした。組織としてのベクトルがまったく揃っていない状態だったのです」と福永氏は当時を振り返ります。
福永氏が最初に必要だと感じたのは、意識改革でした。そこで生まれたのが「魅せる化」というスローガンです。
「世間では『見える化』が可視化のキーワードのようになっていますが、見えるようになるという受け身ではなく、自ら『魅せる』という能動的な言葉にしたかったのです。あわせて、日の当たりにくい間接材購買を魅力ある組織にしたい、そこで働くメンバーにも魅力ある人材になってほしいという思いを込めました」と福永氏は語ります。
ただ、言葉を掲げるだけでは組織は動きません。福永氏は全拠点に足を運び、当時 160 名だったメンバーひとりひとりと対話を重ね、このスローガンに込めた思いを直接伝えていきました。
さらに、バイヤー業務から 3 名を専任として切り出し、G 検定(日本ディープラーニング協会が実施する AI 活用の資格)の取得や BI ツールの習得を通じてデータ分析チームを立ち上げました。
「外部のコンサルタントに依頼する選択肢もありますが、それではその時点での成果にとどまってしまいます。改革は継続していくものですから、社内で人材を育てるほうが、長期的には組織の力になると考えました」と福永氏は語ります。
これらの取り組みが功を奏し、180 名のバイヤーと 5,500 社のサプライヤーを抱える組織で、「魅せる化」は数字で語るための共通言語として根付くことになりました。
続けて、厚生労働省 保険局 医療介護連携政策課長の山田章平氏が登壇しました。テーマは、マイナ保険証をめぐる補助事業で Amazonビジネスを活用した取り組みです。
厚生労働省では、スマートフォンでマイナ保険証を利用する仕組みが始まるにあたり、全国の保険医療機関・薬局に、顔認証付きカードリーダーでスマートフォンを読み取るために必要な汎用カードリーダーを行き渡らせることが求められていました。その対象は約 22 万施設に及びます。
「国が購入価格の 2 分の 1 を補助しますが、上限 7,000 円の補助に対し、従来の申請・審査・振込というスキームでは補助金の振込までに数か月を要し、医療機関・薬局と補助を行う社会保険診療報酬支払基金の双方にとって事務負担が膨大になります。しかも、準備期間は約 2 か月しかありませんでした」と山田氏は語ります。
そこで発想されたのが、Amazon のクーポンを使って補助を行う仕組みでした。国が EC サイトのクーポンを通して補助を行うのは、初めての試みです。
「B2B のサイトであること、自社で在庫を持っていること、全国津々浦々発送していただけること。これらの条件にマッチしていたのが Amazonビジネスでした」と山田氏は語ります。
公募を経て 2025年6月に契約を締結。その後、医療機関・薬局向けの専用ページの立ち上げ、補助対象である 6 社の汎用カードリーダーと USB ケーブルのセット販売に向けた在庫確保、22 万施設それぞれへの専用クーポンの発行、Amazonビジネス未利用の施設向けの初回登録コードの発行までを、社会保険診療報酬支払基金を含む三者が一体となって準備しました。
最も苦労したのは、少人数で運営する小規模な診療所や薬局にも分かりやすく購入してもらうことでした。そこで、Amazonビジネス側が詳細なマニュアルを作成し、メーカーとの在庫交渉も担いました。結果として、開始から数か月の間に約 40 %の保険医療機関・薬局が、この仕組みで汎用カードリーダーを購入しています。
「どの地域でどれだけこの機器が購入できたか、すなわち政策の実施状況をリアルタイムで把握できるのはありがたいことです。今後は進捗管理や、事業設計にも役立てられるのではないかと思います」と山田氏は語り、講演を締めくくりました。
最後に、アマゾンジャパン合同会社 Amazonビジネス事業本部 事業本部長の石橋 憲人が登壇し、日本におけるAmazonビジネスの歩みと、現在進めている取り組みについて紹介しました。
日本でのサービス開始から約 9年、貫いてきたのは「お客様の声を起点に進化を続ける」という姿勢です。例として挙げられたのが請求書払いをめぐる改善です。グループ会社別・部門別・プロジェクト単位で請求書を個別に発行できるようにし、発行のタイミングも商品の郵送時から、お客様のもとに商品が届いた時点へと切り替えました。日本の商習慣では一般的な口座振替にも対応しています。いずれも、お客様から寄せられた要望を起点に実現した改善です。
「お客様の声は、我々の改善の大きなヒントになっています。これからも日本の商習慣に合わせた機能改善に努めてまいります」と石橋は語ります。
ほかにも、指定商品を優先表示する推奨ルールと、対象商品を検索結果から除外する禁止ルールからなる「購買コントロール」、今年開始した「グループポイント移動機能」など、要望に応えた機能が紹介されました。
品揃えの拡充も続いています。B2B 向けプライベートブランドはこの 1 年半で 700 以上の新商品を追加し、種類は 2,500 を超えました。数億点の商品から迷わず選べるよう、日本の購買担当者向けに厳選した法人専用ストア「ビジネスセレクト」も用意されています。中小企業と認定された出店者の商品を可視化する機能、グリーン購入法適合商品の絞り込み、50 以上のサステイナビリティ認証との連携も追加されました。
価格面では、年度末決算特集に加えて夏のビジネス特集を新設し、法人価格の対象商品は昨年比 58 %に拡大しています。さらに、オンラインで完結しないまとめ買いや見積もり購買に対しては、担当者が電話やメールで直接すり合わせる「一括購買コンシェルジュサポート」の試験運用も始まりました。
「オンラインで解決できるものはオンラインで、人が必要なものには人が寄り添う。購買にかけるコストや工数を減らし、お客様が本来向き合うべきことに集中できる状態をつくる——これはサービス開始から 9年、変わらない方向性です。ただ、Amazonビジネスはあくまでも購買の道具です。大切なのはその道具をどう使いこなすか、どんな成果につなげていくのか。それはお客様の意思と工夫次第です」(石橋)
Amazonビジネスは今後も、お客様の声を起点とした進化を続けていきます。
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