内部統制とは、会社の経営目標などを達成するために必要なルール・仕組みを整備し、適切に運用することを意味します。その目的は、業務の有効性および効率性、財務報告の信頼性、法令の遵守、資産の保全などです。購買は、会社にとって資金の流出に関連する重要な業務であるため、購買業務には様々なリスクがあり、内部統制を強化する必要があります。
この記事では、購買業務の内部統制の必要性を解説。さらに、内部統制を確立するための方法をご紹介します。
購買の内部統制とその必要性
内部統制において、リスクマネジメント(リスクの評価と対応)は重要なプロセスです。そのため現状の管理体制、ルールの下で発生しうるリスクをきちんと把握する必要があります。購買に関連する主なリスクには下記のものがあります。
リスク①:購買担当者と取引業者との癒着
取引先業者との癒着は、購買業務の最大のリスクです。取引先事業者にとって購買担当者は、売上増加に繋がる大事なお客であって、積極的な営業攻勢を仕掛けてくる傾向にあります。時にはバックマージンなど不正な取引を持ち掛けられることもあります。
取引先との癒着の影響は、調達コスト高など会社の業績に大きな影響を与えるだけではありません。新聞などメディアで報道されると、会社の社会的信用を一気に失います。会社全体の遵法意識やマネジメント水準が問われ、企業価値を大きく損なうのです。
リスク②:手作業や属人化により業務効率が悪化する
購買業務は、外部にキャッシュアウトすることに直接関連するため、様々な書類や手続きが必要となります。購入依頼書・見積書・注文書・注文請書、納品書、検収書、請求書など、企業によっては取り扱う帳票も数多くあります。一連の帳票は関係性が高いのですが、手書き帳票などでの運用の場合、購買情報の連続性が保てません。作業のダブりやミスなどを誘発し、購買業務の効率性が悪化します。
また、属人化も大きなリスクを含みます。引継ぎが困難など、業務品質が安定しないことや、取引先とのローカルルールによる不正などが発生する可能性を秘めているのです。
購買で行うべき3つの内部統制とは
購買の内部統制では、管理規定を作成すること、購買基準を作成すること、および規定・基準に沿った購買システムを構築し、運用の精緻化をはかることが基本です。
購買管理は、会社の支出に関連する業務であるため、ルールや業務プロセスを定め、システムで担保することで、不正防止につなげることが大切です。
購買管理規定を作成する
購買管理規程は、会社の購買業務に関するルールを定めたもので、このルールに基づいて購買業務に取り組むことで、コストダウンなど経済的効果と経営効率の向上をはかります。いわば、会社における購買業務の憲法であり、購買基準など具体的なルール・手続きは、購買担当役員など権限者の決裁により個別に定められます。
購買管理規定は、一般的に、次の内容で構成されます。
①総則
目的、適用範囲、業務分担、職務権限、購買業務の基本原則などに関する規程
②購買計画
購買計画、購買予算、予算管理などに関する規程
③取引先
信用調査、取引先の範囲、取引先との契約書、取引先の登録・抹消などに関する規程
④購買依頼
購買依頼、依頼の諾否、見積もり、発注決定などに関する規定
⑤発注及び契約
発注書、注文請書、納期など発注条件、契約などに関する規程
⑥検収
受入、検収、検収情報の登録、返品などに関する規程
⑦仕入・支払
仕入計上基準、仕入計上処理、支払い計上処理、買掛金管理などに関する規程
購買基準を明確にする
購買基準とは、購買規定に沿って購買業務のルールやプロセスを定めた規定です。購買規定が購買業務の方向性を定めたものであるのに対し、購買基準は、現実的に購買業務が回せるように具体的に実務ベースで規定されています。
具体的には、次のような基準を定めます。
・仕様や登録・抹消など購買品に係る事項
・選定基準や取引条件など取引先業者に係る事項
・購買依頼から支払いまで一連の購買プロセスに係る事項
・承認依頼・決裁など職務権限に係る事項
購買規定・基準に沿ったシステムの構築
購買規定や基準を定めた後は、定めたルールに沿って業務を行う仕組みを作る必要があります。手書き伝票など人手を要する作業を行うと、効率が悪化すると同時にミスが起きる可能性が高くなります。
最近では、ERP(基幹統合システム)に組み込まれて構築される事例が増えています。購買業務は生産管理や資材管理など他の業務とも密接に関わるため、購買内でクローズするよりも、上流の機能やシステムと連携して運用することで、全社的な業務効率性と正確性が向上します。
内部統制を構築する施策とは
購買規定・基準の整備やシステム化によっても、購買担当者と取引先業者との癒着のリスクは依然として残ります。癒着から生じるリスクを防止するためには、次のような施策があります。
①職務分掌を徹底する
職務分掌とは、部門など組織や個人の行うべき職務を定義し、業務およびその責任の所在をはっきりさせることをいいます。癒着防止のためには、発注担当、検収担当、支払い担当、在庫管理担当を可能な限り明確に分ける必要があります。また、金額や条件などにより上位者の決裁が必要とする仕組みも有効です。
② 購買担当者の長期化を防止
同じ担当者が長期間同じ部署で購買業務を行っていると、取引先業者と癒着する可能性が高くなります。不正が発生するリスクが高まるだけでなく、属人化が進み業務がブラックボックス化します。購買部門は、経理部門と同じように、担当者の定期的な配置換えを行い牽制する仕組みが必要です。
Amazonビジネスで購買の内部統制を実現
多くの企業で、間接材購買は各部門の購買の自由度が高いため、管理水準が低く内部統制の強化が必要と考えられています。Amazonビジネスで間接購買をシステム化することで、内部統制の強化とQCD*の改善を図ることができます。
ここでは、Amazonビジネスを用いた購買の内部統制の具体例をご紹介します。
*QCD:Q(Quality:品質)、C(Cost:費用)、D(Delivery:納期)の頭文字を取った造語
①購買ルールを確立できる
Amazonビジネスでは、購買管理者が購買ルールを決め全社的に適用することができます。今まで、各部門や個々の購買担当者に任されていた間接材の購買業務を、全社的な購買ルールを作成することができ、各部門の購買活動をコントロールすることができるようになります。
(購買ルールの例)
・自社の購買ルールに合った商品や業者を推奨できる
・推奨、非推奨の商品を設定することで購買者が理解しやすい
・承認設定との併用により厳密なコントロールができる
②購買状況を可視化できる
各部門の購入実績はすべて履歴として保存・ 表示、データでダウンロードすることができます。商品や業者ごとの数量、購入金額など必要な情報が‘購買分析ダッシュボード’で可視化することができます。
購買予算やコスト削減目標に対して、リアルタイムで現状を分析・評価することができます。
会社の購買状況を継続的にモニタリングすることで、社内購買規定の見直しや購買コストダウンのためのヒントを得ることができます。
詳しくはこちら > 購買分析ダッシュボード
購買の内部統制には、システム化も検討を
購買業務の内部統制を強化するためには、購買規定などルールの明確化と運用の正確性を担保するシステム化が必要です。製造にかかわる直接材購買については、多くの企業で一定のシステム化を終えていますが、間接材購買については、管理水準が低いことを悩まれている企業もあります。間接購買については、システム化に加えAmazonビジネスなど外部のリソースを活用することは、内部統制を強化するための選択肢の一つといえます。