税理士に聞くインボイス対応 第2回 税理士に聞いてみた-インボイス制度と必要な対応

税理士に聞くインボイス対応 第2回 税理士に聞いてみた-インボイス制度と必要な対応

テーマ:第2回–[クロストーク] Amazon×税理士 インボイス制度対応に関する疑問を解消

前回記事はこちら:https://business.amazon.co.jp/ja/discover-more/blog/tax-accountant-explains-jct-1

第2回では前回に続き、税理士の大向武彦先生をお招きし、インボイス制度への具体的な対応や出品者様から過去に頂戴した様々な疑問にお答えいただきます。

大向税務会計事務所
代表税理士 大向 武彦 先生

石川県出身。新潟大学法学部卒業。
出光興産株式会社退社後、都内の大手税理士法人にて法人税、所得税、消費税、相続税等の国内税務業務に従事し、その後、世界最大級のプロフェッショナルサービスファームであるプライスウォーターハウスクーパース(PwC)にて移転価格コンサルティングを中心とした国際税務に5年間従事した後、独立開業。

大向武彦先生

大向武彦先生

【クロストーク】

Amazon:では早速、ご質問に移らせていただきます。10月1日よりインボイス制度が開始されます。そもそもなぜ今、インボイス制度が開始されることになったのでしょうか。

 

大向先生:消費税の国税全体に占める割合は平成23年以降、約40%であり国の最も重要な基幹税となっています。ところが、最も重要な税目であるにもかかわらず、複数税率の導入によって10%の税率と8%の軽減税率の取引を把握することが困難になってきていました。また、免税販売店を利用した不正還付による巨額な課税漏れがあることも明らかになってきています。
こういった背景から、課税の公平性を維持し、消費税の信頼性を担保するためには、消費税の制度設計の見直しが必要不可欠となりました。

 

Amazon:そういった背景があったのですね。ただ、現在、インボイス制度に対する懐疑的な声も出ているようですが、制度は本当に10月から施行されるのでしょうか?

 

大向先生:納税者の負担が発生する税制改正であるため、当然反対意見が多くなっています。しかしながら、すでに本年3月の国会でインボイス制度の負担軽減措置に関する税制改正法案が可決されており、本年の10月から施行されることはほぼ確定事項です。たとえ、インボイス制度に反対の事業者であっても、法案が可決された以上、日本でビジネスを行うためには、法律に従ってインボイス制度へ対応することが求められます。

インボイス制度の導入により、日本国内の経済取引に対して次の新たな負担が発生します。
① 免税事業者との取引に係る消費税相当額の経済的負担
② 適格請求書(以下、インボイス)の発行、管理、記帳に伴う経理上の労務負担
③ 請求書・領収書等システム対応負担
④ 経理不備を理由とした税務調査による課税リスクの負担

これらの負担を末端価格に転嫁することができればよいのですが、できる事業者は限られていると思います。その場合には、出品者側か、買手側の事業者でこれらの費用を負担することになります。



Amazon :具体的に課税事業者の方々はどのような対応が必要でしょうか?

 

大向先生:消費税の納税義務がある事業者は、「適格請求書発行事業者の登録申請書」を税務署に提出することで、適格請求書発行事業者登録番号(以下、登録番号)が付与されます。現時点(2023年5月)では電子申請であれば約1か月半、紙での提出であれば約3ヶ月程度で登録番号が付与されますが、9月は制度開始の直前のため混みあうことが予想されています。


制度がスタートする10月1日までに登録番号の付与が間に合わない場合、一般的には取引先に対して後日、登録番号が入った請求書を改めて発行する追加作業が必要となります。(※)お早めに「適格請求書発行事業者の登録申請書」を提出し、インボイスの要件を満たした請求書の形式を準備してください。

※Amazon上で10月1日の制度開始時より適格請求書をお客様に提供するためには9月30日までにセラーセントラルにて登録番号の入力が必要です。10月1日以降、税額控除を求めるお客様は適格請求書を発行できる販売事業者を選択する可能性があります。そちらも踏まえ、登録番号の取得有無・時期をご判断ください。なお、番号入力が10月1日に間に合わなかった場合、番号入力以降のみ、お客様のリクエストがあった際、インボイスに必要な内容をAmazonから通知することを検討しています。



Amazon:一方、免税事業者の場合も、何か対応は必要でしょうか?

 

大向先生:免税事業者の場合には、インボイス登録を行って消費税の課税事業者となるか、インボイス登録を行わず免税事業者のままでいるかについて、7月末をめどに意思決定しなければなりません。


意思決定するための判断基準は下記の通りです。
① 取引形態(B to B、B to C、国外など)
② 買手側の消費税の計算方法(簡易課税かどうか)
③ 値下げ圧力、市場競争力の低下リスク 



例えば、①の取引形態による判断基準では、出品した商品の買手が法人(BtoB)か、個人かを確認しましょう。買手が個人の場合には、消費者(BtoC)の側面と事業者(BtoB)の側面があります。買手が「個人の消費者のみ」であれば、インボイスの発行は不要と判断できますが、買手が「個人でも事業者」の場合があるため、法人、個人の判断基準ではインボイスは不要だと判断することはできません。



Amazon:様々なケースを検討する必要がありそうですね。出品者様からは「消費者向け販売が主ですので、インボイス登録は必要ないと考えています。」というお声をいただくことがよくあるのですが、こちらのケースはいかがでしょうか?



大向先生:一般的に、買手が100%個人消費者であるBtoC取引である場合には、買手がそもそも消費税の計算・納付を行わないため、免税事業者はインボイスを交付する必要がなく、そのためインボイス登録の必要もありません。



Amazon:Amazonではすべての出品者様は商品を登録されますと自動的に、法人・個人事業主のお客様向けのAmazonビジネスにも出品が開始されます。よって法人・個人事業主のお客様からも購買されている、または今後購買される可能性があります。このようなケースではどう考えるべきでしょうか?

※貴社のAmazonでの法人販売状況について:B2Bセントラルで確認いただけます。
リンク先が正常に表示されない場合:「出品用アカウント情報」(こちら)→左下の「サービスの管理」をクリック→「AmazonBusiness」にご登録ください。既にAmazonBusinessにも販売されておりますが、法人向け売上閲覧や販促機能が無料でご利用いただけるようになります。



大向先生
:そういった場合、出品した商品の買手が、すべて個人かつ事業を行っていないと考えるのは現実的ではありません。個人の販売先であっても事業を行っており、インボイスを必要としている法人・個人事業主のお客様が一定数いると考えるべきです。Amazonを含めこういった買手側にインボイスの交付が必要となる事業者のお客様が含まれている可能性がある場合には、免税事業者はインボイス登録の検討が必要です。


買手側の法人または個人事業主の経理の立場からすると、インボイスではない領収書の経費精算は、コスト増、経理負担増の観点からインボイス制度導入後は消極的になる可能性が高いです。
経費精算できないとなると、インボイス番号の記載のない領収書しか出せない販売事業者は市場競争力が低くなってしまう可能性が予想されます。



Amazon:ありがとうございます。以上を踏まえて総合的にインボイス登録を受けるか慎重に検討する必要がありそうですね。

最終回となる次回はより具体的な各ケースの対応方法についてよくあるご質問をご紹介させていただきたいと思います。

<お問い合わせ・参考リンク>
適格請求書発行事業者登録番号取得方法(国税庁公式サイト)
インボイス制度電話相談センター(国税庁公式サイト)
・Amazonにおけるインボイス制度についての一般的なご質問やご相談先:amazon-tax-reform@amazon.com
・本制度に関して必要な対応やAmazon.co.jpの取り組みに関しての詳細: https://www.amazon.co.jp/jct?ref=JCT_bl_Reg_45089

税務調査・起業・経理代行・記帳代行のご相談などお気軽にお問い合わせください。
ご相談・お問い合わせは、お電話、面談、お問い合わせフォームにて受け付けております。
ホームページ:https://www.omk-tax.com/

Product Updates