税理士に聞くインボイス対応 第3回 税理士に聞いてみた-インボイス制度と必要な対応

税理士に聞くインボイス対応 第3回 税理士に聞いてみた-インボイス制度と必要な対応

テーマ:第3回 Q&A 個別のケースにおけるインボイス制度対応

インボイス制度について

第1回はインボイス制度の概要や今後必要となる実務と制度開始までに必要な準備、

第2回はインボイス制度への一般的な対応や出品者様から過去に頂戴した様々な疑問について解説いただきました。

 

第1回:https://business.amazon.co.jp/ja/discover-more/blog/tax-accountant-explains-jct-1

第2回:https://business.amazon.co.jp/ja/discover-more/blog/tax-accountant-explains-jct-2

 

最終回となる第3回では前回に続き、税理士の大向武彦先生にインボイス制度における、具体的な各ケースの対応方法について出品者様からよくある質問にご回答いただきます。

大向税務会計事務所
代表税理士 大向 武彦 先生

石川県出身。新潟大学法学部卒業。
出光興産株式会社退社後、都内の大手税理士法人にて法人税、所得税、消費税、相続税等の国内税務業務に従事し、その後、世界最大級のプロフェッショナルサービスファームであるプライスウォーターハウスクーパース(PwC)にて移転価格コンサルティングを中心とした国際税務に5年間従事した後、独立開業。

大向武彦先生

大向武彦先生

Q1.「輸出入取引や国外事業者である場合のインボイス登録について教えて下さい。」

 

大向先生:国際取引とインボイス制度との関係について、輸入、輸出、国内取引のケースごとに説明しますので参考にしてください。

 

① 輸入消費税(※)


輸入取引はもともと国外取引ですので、消費税の対象外取引です。そのためインボイス制度が導入されても影響はなく、取引について適格請求書(以下:インボイス)を交付する必要もありません。
ただし、これまでも輸入する際に税関で輸入消費税を申告して直接納付しています。これは、輸入者(買手側)が納税義務者となっています。この場合の仕入税額控除の要件はこれまで通り、輸入許可書等の7年間保存と帳簿記載となり、インボイスは不要です。



② 輸出免税(※)


輸出取引は、課税対象である国内取引ですが、例外的に免税扱いとなっています。一般的に販売事業者は国外の買手側に輸出する場合には、消費税を請求していませんので、インボイス制度が導入されてもインボイスの交付義務はありません。
※日本のマーケットプレイス上において、本制度の開始後、税額控除を求めるお客様は適格請求書を発行できる販売事業者を選択する可能性があるため、法人ビジネスの成長のためにも番号の登録もご検討ください。

貴社の法人向け販売状況はこちらからご確認いただけます。:https://sellercentral.amazon.co.jp/business/b2bcentral

上記のビジネスへの影響を鑑みても、納税義務がなく番号を取得されないとご判断された場合、消費税設定ページで「いいえ、 日本で消費税の納税義務はありません。」を選択お願いいたします。
消費税の設定:https://sellercentral.amazon.co.jp/tax/jpenrollment/home?ref=JCT_bl_Reg_45089

 

 

③ 国内取引


国外事業者であっても日本国内で行われた取引(※)であれば、インボイス制度の影響を受けます。これまでは、国外事業者が日本国内に在庫として保有している商品を販売した場合、国内の買手側は消費税の仕入税額控除を取ることができました。
ところが、インボイス制度導入後の10月1日以降は、国内の買手側は、Amazon出品者(国外事業者)がインボイス登録を行わない限り、仕入税額控除を受けることができなくなります。
※    消費税法上の国内取引とは、資産の譲渡の場合にはその資産が所在していた場所が日本国内かどうかで判定し、国内取引であれば日本の消費税法の対象取引となります。

つまり、国外事業者であっても、その商品が日本国内に所在するのであれば国内取引に該当し、「免税事業者と課税事業者の取引」間で生じる経済的な費用負担と同様の問題が、「国外事業者と課税事業者との取引」間でも生じることになります。国外事業者であっても日本国内で行われる取引であれば、インボイス登録の検討が必要となります。

Q2.「今後新会社を設立する場合は、インボイス登録はどのように対応すべきでしょうか?」

設立の初日からインボイス登録事業者として業務を開始したい新設法人は、その旨を記載した「適格請求書発行事業者の登録申請書」をその課税期間の末日(法人の場合事業年度末、個人の場合12月末日)までに提出することで、その初日にさかのぼってインボイス登録を受けることができる特例があります。

資本金の額が1,000万円未満の新設法人は初年度が免税事業者となるため、「適格請求書発行事業者の登録申請書」と併せて「課税事業者選択届出書」を設立した日の属する課税期間の末日までに提出する必要があります。

なお、設立日が2023(令和5)年9月30日以前の場合には、インボイス登録日は2023(令和5)年10月1日となります。この場合は経過措置により、その登録日から自動的に課税事業者となるため「課税事業者選択届出書」の提出は不要です。


Q3.「当社には販売店が複数ありますが、インボイス登録すると当社宛にすべての販売店のお客様から問い合わせがくることになるのでしょうか?」

 

複数の販売店がある場合でも、付与される登録番号は一つの会社に一つです。そのため、顧客から販売店への問い合わせが、インボイス登録者である本店に集中してしまうのではないかというご心配だと思います。


国税庁のインボイス公表サイトによる開示情報は、「登録番号」「本店又は主たる事務所の所在地」「氏名又は名称」「登録年月日」であり、「電話番号」等の連絡先の公表はありません。なお、個人の場合は「主たる事務所の所在地」は申し出がない限り公表されません。


インボイスの内容について問い合わせがあったときに事業者を特定できるように「電話番号」の記載をしておけば、「会社名」ではなく「販売店」の名称でのインボイスの発行が認められています。そうすることで顧客からの電話による問い合わせ先はこれまで通り販売店となります。
※Amazon上では電話番号+ストア名での記載の予定はございません。ご了承ください。

Q4.「10月の制度開始ぎりぎりまで様子を見てからインボイス登録を検討したいと考えていますが、問題ないでしょうか?」

 

大向先生:現時点でも登録番号が付与されるまで、電子申請で約1ヶ月半、紙での提出であれば約3ヶ月程度の時間がかかっています。今後はさらに混みあうことが予想されています。そのため、遅くとも7月中には「適格請求書発行事業者の登録申請書」を提出しておかなければ、10月1日に間に合わなくなる可能性があります。7月中には申請し、9月中には請求書の形式をインボイスの要件を満たすように変更してください。
登録番号の付与が10月1日までに間に合わない場合、取引先からインボイス再発行を依頼されるなど取引現場に混乱が生じる可能性が高くなりますので早めの対応が必要です。

※Amazon上で10月1日の制度開始時より適格請求書をお客様に提供するためには9月30日までにセラーセントラルにて登録番号の入力が必要です。10月1日以降、税額控除を求めるお客様は適格請求書を発行できる販売事業者を選択する可能性があります。そちらも踏まえ、登録番号の取得有無・時期をご判断ください。なお、番号入力が10/1に間に合わなかった場合、番号入力以降のみ、お客様のリクエストがあった際、インボイスに必要な内容をAmazonから通知することを検討しています。

Q5.「卸先にAmazonに出品していることを知られたくないのですが、インボイス登録で知られてしまうことにはならないでしょうか?」

 

 

大向先生:10月1日以降、貴社が卸先に商品を卸す際には、貴社の登録番号を付与したインボイスを発行することになります。

一方で、卸先がAmazonから貴社の商品を購入した場合には、Amazonが貴社に代わってAmazonのインボイス(※)を発行することになっています(媒介者交付特例といいます)。
※Amazonから発行するインボイスには、Amazonのインボイス番号のほか、セラーのインボイス番号を含む情報を記載予定です。

卸先に対して、Amazonに出品していることをオープンにしたくない場合には、別法人を設立してインボイス登録を行う方法や、個人事業主としてインボイス登録を行う方法など、別アカウントでの出品に切り替える方法が考えられるかと思います。

一般的にインボイス登録事業者であれば、取引先に対してインボイスの発行義務が生じます。インボイス登録事業者であるにもかかわらず、セラーセントラルに「適格請求書発行事業者登録番号」を入力しない、という選択をすると、商品の購入者側の求めに応じて自社でインボイス発行を行う必要がある可能性がございますのでご留意ください。

Q6.「個人事業者です。これまでは自分で確定申告書を作成しているのですが、インボイス登録すると、消費税の申告書を作成しなくてはならず、税理士費用が発生するのでしょうか?」

 

大向先生:免税事業者がインボイス登録を行った場合の負担軽減制度として、確定申告手続きを簡便的に行える特例措置が3年間適用できます。この特例措置は、売上に係る消費税の20%を消費税の納税額として申告するだけであり、複雑な計算は必要ありません。これまで税理士に依頼せず自分で所得税の申告書を作成している個人事業者であっても、特例措置期間中は自身で消費税の申告書の作成ができると思います。

 

 

                                  <特例措置による消費税の計算方法>

      売上金額に係る消費税額 × 20%  = 納付税額

 ただし、Amazonの出品者様の多くは、卸売業、小売業であると考えられるため、簡易課税制度を選択して消費税の申告を行うほうが納税額は少なくなる可能性があります。

 

                         <簡易課税による消費税の計算方法イメージ>

      ① 卸売業に係る消費税額 × 10%

      ② 小売業に係る消費税額 × 20%

      ③ ① + ② = 納付税額

 

 

簡易課税制度を選択した消費税の申告書の作成は、若干複雑になりますので、税務署に相談するか税理士に作成依頼をすることをおすすめします。

特例措置による計算と簡易課税による計算では消費税の納税額に差が生じます。特例計算で申告するか、税理士に報酬を支払って簡易課税で申告するかの判断は、それぞれの計算による納税額を試算されてから判断すると良いかと思います。

なお、簡易課税制度により計算する場合には、インボイス登録時に別途、「簡易課税制度選択届書書」を税務署に提出しておく必要がありますのでご留意ください。

Q7.「インボイス制度の義務と罰則があれば教えて下さい。」

 

① 交付義務
インボイス発行事業者は買手側の求めに応じてインボイス又は適格簡易請求書(簡易インボイス)を交付する義務があります。なお、これらの書類は電子データで買手側に提供することもできます(電子インボイス)。

なお、値引きや割戻しの際には適格返還請求書(返還インボイス)、インボイスに誤りがあった場合には、修正インボイスを交付する義務があります。
※Amazonにおいても適格返還請求書を交付予定です。

② 保存義務
インボイス発行事業者は、交付したインボイスの写し又は電子データを7年間保存する義務があります。2024(令和6)年1月1日から電子帳簿保存法が施行され、電子データの紙への出力保存が禁止される予定ですが、電子インボイスについては紙に出力して保存することが認められています。

③ 罰則
インボイス登録を受けていない者が、「インボイスと誤認されるおそれのある書類を交付」した場合、又はインボイス登録事業者が、「偽りの記載をしたインボイスを交付」した場合には、「1年以下の懲役」又は「50万円以下の罰金」に処せられます。

 

Q8.「中古品の売買取引を行っている場合、個人から中古品を購入した取引については、インボイスがなくても、消費税の仕入税額控除が適用できると聞きましたが本当でしょうか?」

 

大向先生:(買い手側が)古物営業法上の許可を受けている古物商であれば、という条件付きですが、インボイス発行事業者でない者から「古物」を買い取った場合、インボイスがなくても消費税の仕入税額控除を行うことが認められています。(※)

中古車の取引市場や質屋市場など、個人から中古品を買い取って販売するような市場では、インボイスの交付を受けることが困難であるため、このような例外の取扱い規定が定められています。
古物営業を営む場合、古物営業法において、商品の仕入対価の総額が1万円以上(税込み)の場合には、古物台帳に以下の事項を記載して保存すると定められています。

① 取引年月日
② 古物の品目及び数量
③ 古物の特徴
④ 相手方の住所、氏名、職業及び年齢
⑤ 相手方の確認方法

消費税の仕入税額控除の要件は、上記の古物営業法の古物台帳に記載する内容を帳簿に記載するほか、「古物営業取引でありインボイス不要」の旨を明示して、総勘定元帳を7年間保存しておくことが必要です。

参考までに、この例外規定の対象となる「古物」とは古物営業法で以下のように定義されています。

『一度使用された物品(鑑賞的美術品及び商品券、乗車券、郵便切手その他政令で定めるこれらに類する証票その他の物を含み、大型機械類で政令で定めるものを除く。)若しくは使用されない物品で使用のために取引されたもの又はこれらの物品に幾分の手入れをしたものをいう。』

「使用されない物品で使用のために取引されたもの」も「古物」として定義されていることから、許可を受けている古物商であれば、中古品だけでなく、未使用品の転売のための仕入取引もインボイス制度の例外取引として取り扱われ、従来通り、インボイスなしで仕入税額控除が適用できるものと考えられます。

※本制度の開始後、Amazon上で税額控除を求めるお客様は適格請求書を発行できる販売事業者を選択する可能性があるため、法人ビジネスの成長のためにも適格請求書発行事業者登録番号のご取得もご検討ください。
納税義務がなく登録番号を取得されない場合、消費税設定ページで「いいえ、 日本で消費税の納税義務はありません。」を選択お願いいたします。
消費税の設定:https://sellercentral.amazon.co.jp/tax/jpenrollment/home?ref=JCT_bl_Reg_45089

 

 

 

以上、様々なケースについての疑問を大向先生にご回答いただきました。大向先生、ありがとうございました。

今回ご紹介した内容が少しでも読者の皆様の参考となりましたら幸いです。

 

<お問い合わせ・参考リンク>
・本制度に関して必要な対応やAmazon.co.jpの取り組みに関しての詳細: https://www.amazon.co.jp/jct?ref=JCT_bl_Reg_45089
適格請求書発行事業者登録番号取得方法(国税庁公式サイト)
インボイス制度電話相談センター(国税庁公式サイト)
・Amazonにおけるインボイス制度についての一般的なご質問やご相談先:amazon-tax-reform@amazon.com

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